あるてぃまおんらいん
大和シャードに移住したアルティの日記です。UOと犬、たまに小説など。
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第2章 止まりし時は今再び動き出す
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『別れは始まり』
『剣に誓いを立てよ』【第一章】 出会い

今までのお話はこちら↑になります。
第2章 止まりし時は今再び動き出す

空は雲が厚く、太陽の日差しは地上へは届かない。まだ陽が落ちる時間ではないにも関わらず薄暗く、どこか気分を憂鬱とさせるものがある。
風が吹き、辺りの木々はザワザワと音をたてた。
周りの木々より遥かに巨大な大木の枝にスッと一人の青年が立った。
20歳を迎えた頃だろうか。深い森を思わすダークグリーンの長い髪は風になびいている。人と変わりない姿をしているが、人でない事は一目瞭然であった。
鋭く尖った耳。この世のものとは思えない程に綺麗に整った顔はどこか異質な印象を与える。そして何より、その青年の身体は透けていた。
大木に手を付いて立っている様は、まるでよく出来た彫像のようである。
遠くを見つめていたその青年の口が動いた。
「そろそろ…か。」
静かにつぶやいたその声は、木々のざわめきにかき消されて誰の耳にも届く事はなかった。
青年はしばらくそのままの体勢でいたが、現れた時と同じようにスッとその姿を消したのであった――。


短く切り揃えられた髪は黒みを帯びた茶。体中が血や泥で汚れていたが、先程拭いてあげたので今は日に焼けた綺麗な褐色の肌を見せている。
ユーから来たと言っていたが、会った事は無いと思う。だが、頭の片隅に引っかかるような感じがした。
その青年…ユーイは体力回復の為に隣の寝室で寝かせている。

あの時―。
ユーイを最初に見つけたのはカルアだった。
何かに気付いたようにハッと辺りを見渡したカルアは、急に家から飛び出して行った。
何事かと思って後を追ってみると、男性がよろめきながら遠ざかって行くのが見えた。
少し先にいるカルアは呆然と立ち尽くしている。
「…カルア?」
おかしい。呼びかけても反応がない。
どうしてしまったのだろうか。
近付いて行き、カルアの身体にそっと手をかけまた話しかけてみる。
「どうかしたの…?」
それまで黙ったまま男性が去った方向を見つめていたが、ポツリと呟いた。
(気配が……)
その言葉の意味を聞こうとするが、阻まれた。
「…っ!」
メキ…メキメキッ…ズドーン!
地響きがこちらまで届いた。
そう遠くない場所で、突如として木が倒れたのである。
倒された木の傍にいるのは、大きな棍を持った巨人…オーガだ。
ハッとしてとっさに身構えたものの、こちらには気付いていないようだ。
オーガはニタリと笑い、その巨体を揺らして歩いて行く。
どうやら獲物でも追っているらしい。
「獲物…」
口に出してから気付いた。そうだ、さっきの男性はオーガに狙われていたのではないだろうか?
「大変…!あの人、すでに深手を負っているのかもしれない…。」
チラリと見えた姿は、深手を負って限界が近いようにも思える。
どうしよう…。私が行っても、追いつく前にやられているかもしれない。
その考えを読み取ったのか、オロオロとしている私の前にカルアが立った。
(私が行こう。)
カルアなら私が行くより断然早い。それに私よりも頼りになるだろう。
「お願い、カルア。オーガを仕留めてあの人を助けて…!」
指示を受けたカルアは、頷くとすぐさまオーガを追って駈け出した。
セリア自身も追うが、早さは段違いだ。
息を切らせて走り続け、ようやく追いついた頃にはすでに終わっていた。
その時のユーイを見るカルアがやけに優しげに見えたのだ。
ユーイの事を知っていたのだろうか?それとも、他に何か……。
カルアに聞いてみたが、曖昧な答えしか返ってこなかった。
一体、どうしたのだろうか?
カルアとはもう10年以上共に過ごしている。だが、今までこんな風に考え込んでいる事はなかった。
ユーイが眠っている寝室を見ながらあの時の事を振り返っていたセリアは、そっとカルアを見つめてみる。
カルアは帰ってからずっと窓の外を眺め、心ここに在らずの状態だ。
はぁ…
内心で溜め息を付いていると、カルアがこちらを向いた。
(すまない…。私自身まだ混乱していてうまく説明できないが、これだけは言っておくべきだろう。)
何なのだろうか?不思議に思ってセリアは首を傾げた。
(セリア。あの青年は…お前の父親を探す手掛かりになるかもしれない。)
動揺で頭が一瞬真っ白になった。
「お父さんの…手掛かり…」
呟いた言葉の意味を理解しようとするが、心臓が激しく鼓動を打ち思考の邪魔をする。
父は行方不明になったのだ。セリアが4歳の時に。当時の事はカルアからも聞いている。三強と呼ばれる中の黒閣下と交戦中に忽然と姿を消した、と。
その父の手掛かりを、あの人が…?
ようやく意味を捉えたその時、寝室の扉がガチャリと開いた。


誰かが呼んでいる声がする。
「………。」
だが、霞がかかったように朧げでハッキリと聞き取れない。
辺りを見渡しても、何も見えない。
小さな頃から度々見てきた夢だ。
いつも聞き取れない声だけが聞こえて何も見えない。
もう、何度同じ夢を見ただろうか。
「誰を呼んでるんだ?お前は一体誰なんだ。」
夢の中で問いかけてみても、返事は返ってこない。
「………。」
いつもなら目が覚める頃のはずなのだが、目が覚める気配がない。
このまま目が覚めないのではないかという不安に駆られたその時、ふと声が聞こえた気がした。
…ふぇ……うぅ…ぐす……
確かに聞こえた。子供の泣き声だ。
今までに無かった事に動揺しつつも、気になって仕方がなかった。とにかく声のした方に向かってみる事にした。
「どこだ?」
噛み殺したような泣き声の大きさからしてそう遠くないはずだ。
視界はぼやけていたが、とにかく進んでみた。
すると、遠くに一部分だけ鮮明に見える所を見つけた。
その場所にはボロボロになった子供が倒れている。靴は脱げたのか、裸足になっている足は泥で汚れている。服はズタズタになり、血が滲んでいた。
何かがあったとしか言えない有様に、血の気が引いた。
「う…うぅ………」
かすかに声が聞こえた。どうやらまだ息はあるらしい。
その子供に駆け寄ろうとした瞬間、奇声が聞こえた。
キェーーーー!
見ると、人と鳥が混ざりあったような姿をしているハーピーの群れがいた。
その中の一羽が急降下し鋭い爪で鷲掴みにした。
「やめろーーーっ!」
腰に吊るしてある剣を抜き、子供を掴んでいるハーピーに切りかかった。
だが、ハーピーは甲高い声で鳴きヒラリと避けた。
ハーピーに掴まれている子供は、薄眼を開けこちらを見た。
「…と…さ……」
何を言ったのかは聞き取れなかったが、呼ばれた気がした。何としてでも助けなければ。何故かそんな思いが募る。
下手に動いて子供を傷付ける訳にはいかない。
ジリジリと間合いを詰めていくが、相手は空を飛んでいる。
陸にいるこちらを嘲笑うかのように、ハーピー達は上空でケタケタと笑っている。
すると、子供を掴んでいたハーピーがニタリと笑った。
嫌な予感が…そう思った瞬間、そのハーピーは掴んでいた子供を投げつけてきた。
「なっ!…………ぐぁっ…!」
「あぐっ……」
咄嗟に抱え込んだが、その衝撃は凄まじかった。
「ゲホッゲホッ…!」
大きく咳きこんだ。抱え込んだ子供の様子を見てみたが、どうやら気絶しているようだ。
それまで笑って見物していたハーピー達が一斉に襲いかかってきた。
だが、もう躊躇う必要は無い。守るべきものはこの手の中にあるのだから。
充分にハーピーを引きつけ、技を放った。
「Whirlwind Attack!!」
突如として巻き起こった旋風に、ハーピー達は切り刻まれて崩れ落ちた。
崩れ落ちたハーピー達に息が無いのを確認し、ようやく息をついた。
「ふぅ…。」
腕の中の子供の怪我が思ったよりもひどいのを見てとり、手をかざした。
「Obsu Vulni―Close Wounds 」
みるみる内に怪我が治っていく。回復魔法を唱えたのだ。
だが、引き裂かれた服までは直せない。
何か着せる物を…と探した末、背に付けていたマントで包んであげた。
「これでいい。―――良かった。」
堪らなくなって、未だ気絶したままの子供を抱き締めそっと頬を寄せた。
その瞬間急に視界がぼやけ、意識が遠のいていく。
あぁ…目が覚めるのか。
そう思い、慣れた感覚に身を委ねた。

「……ん…んん…。」
まだ疲労が残っているのか瞼が重い。目覚めた後のぼんやりとした感覚の中、先程の夢を振り返った。
最初はいつもの夢だったのに…
いつの間にか自分じゃなくなっていた。見たことのない剣。聞いた事もない呪文。
どうしてあんな夢を見たのだろうか?夢なのだから理由はないのかもしれない。
だが、気になる事がある。あの怪我をしていた子供だ。
ハッキリと声を聞いた訳ではないが、顔立ちや髪の色からして助けてくれたセリアさんに似ていた。
夢とは実際に見た事や聞いた事、もしくは願望が元になっている。だが、願望という事はないだろう。
なら、あそこに俺もいたのか?
いつだ。3歳、4歳の頃か?
もしあの子供がセリアさんだとしたら、俺もそのぐらいだろう。
だが、その頃だとしたら――。

「目が、覚めましたか?」
突然、至近距離からやわらかな声音が聞こえた。
ぼーっとしたまま天井を見つめるかたちで考え事をしていたから気付かなかった。
声のした方を見てみると、女性が椅子に座って微笑んでいる。
まっすぐに伸びた長い銀髪を赤いリボンで1つにまとめた、見るからに優しそうな女性だ。
「え…と……?」
正直、困惑した。
一体誰なんだ。こんな綺麗な人にずっと寝顔を見られてたのか!?
よ、涎出てないよな?
思わず口元を拭きそうになった手を元に戻した。
その動作を見て思考を読み取ったのか、その女性はクスクスと笑っている。
恥ずかしさで居た堪れない気持ちだった。
「私は、リムセアと申します。あなたの事は娘から聞いていますよ。」
娘…セリア、さん…?
そう思い至り、ガバッと跳ね起きた。
「す、すみません!お世話になっちゃって…」
よく見てみると確かにセリアさんに似ているが、大人の落ち付きがある。
「いえ、気になさらないで下さい。セリアったら、魔法の使い方がまだまだなんですもの…」
ハァ…とため息を吐きながら、娘の駄目出しをしている。
その憂いを帯びた顔もまた綺麗で思わず見惚れてしまったが、ふと違和感を感じた。
その違和感の正体を探って首をひねっていると、リムセアがこちらの様子がおかしい事に気付いた。
「どうかされました?」
問いかけてくるその眼差し。艶やかな銀髪に、瑞々しい肌。繊細な目鼻立ちが整った美しい女性だ。
一体どこに違和感があるのだろうか?
「いえ、何でもな……あっ…」
言い終わる前に気付いた。
そうだ。リムセアさんはセリアさんの母親なんだ。なら、何故…
「ええっと…その…お若いですね…」
確かに、若い。雰囲気は大人を思わせるが、それ以外を見れば対して年齢差を感じさせない。
思いも寄らぬ質問に思わずキョトンとした表情になったが、何を言いたいのか察したようで「あぁ。」と再び微笑みの浮かぶ顔に戻った。
「私はエルフの血を引いていますから、普通の人間に比べると歳を経ても外見に変化が現れるのが遅いのです。」
長命なエルフは成人するまでは人間と変わらずに成長するが、それ以後はゆっくりと年を経るらしい。
それは、最も体力のある期間を長くする事によって「森の番人」とも言われるエルフ種族を守る為だとリムセアは語る。
「じゃあ、リムセアさんは実はかなり歳をとっていたり。なんて事も…」
冗談のつもりで言ってみたが、無言の微笑みで返された。
顔は見惚れるぐらいに綺麗だが、その無言がやけに恐い。
き…聞いちゃいけない事だったか……
どうしたものかとオロオロしていると、リムセアの方から口を開いてくれた。
「ところで…怪我の確認をさせて頂いたのですけど、胸に残る古い大きな傷は一体…?」。
肩から腹にかけて斜めに走った傷跡がある。それに触れてみた。痛みはないがその部分だけ分厚く、皮膚の色が違う。
「これ…は…、小さい頃にモンスターに襲われて出来たものみたいです。」
「みたい?」
間髪入れずに聞き返されたが、答えに困った。
「その…当時の記憶が無いんです。まだ幼かった事もあって、死に至る程の傷を負ったショックで記憶を失ったんじゃないか。ってヒーラーに言われました。」
何があったのかは、人伝てに聞いたから知っている。
突如襲ってきた悪魔の集団。人々は逃惑い、逃げ遅れた者は無残な死を遂げた。多くの血が流れ、家屋は焼け、ユーの町は壊滅状態となった。
目が覚めた時にはその惨劇から1週間が経っていた。比較的無事だった家屋にたくさんの人が身を寄せ合い、互いに助け合った。
父や母の行方は未だに分からない。きっと、あの時の犠牲者の中にいるに違いない。遺体の損傷が激しく、身元が分からない者が多かったと聞く。それに、これまでずっと逢えなかったのが何よりの証拠だろう。
それを聞いたリムセアは「そう…」と呟き、そっと瞳を閉じた。


「そろそろ、セリアにあなたが起きた事を伝えてきますね。」
そう言って椅子から立ち上がったリムセアは、ドアの方へ向った。
立ち上がったリムセアを見て、自分がまだベッドの中だという事を思い出した。
「あっ、俺も行きます!」
ガチャリ。
ちょうどリムセアがドアを開けた時だった。慌ててベッドから出ようとして足が縺れた。
「うわっ…とっとっと…!」
何とか転ばないようにバランスを取ろうとするが、うまくいかない。
前のめりになっている為そのまま驚いた顔のリムセアを通り越し、ドアの向こうに行ってしまった。
その先にいるのは…こちらに気付き目を見開いたセリアだ。
ぶつかる!そう思った次の瞬間、視界の隅からサッと黒い影が現れて立ち塞がった。

ドンッ!

「っ!――いたたた…」
尻もちをつく格好でぶつかった相手を見上げると、そこには明らかに機嫌の悪そうなナイトメア――カルアがいた。
うわっ…怖っ…!
ただでさえ見る者を畏怖させる容貌に、怒りが見て取れる。
助けてくれたあの時はもっと優しい顔をしてたような…
心の中でそう呟くも、目の前にいるカルアは恐ろしい。
「ご、ごめん…」
謝ってはみたものの、納得いかない。
わざとじゃないのに、何でそこまで怒っているんだ…
謝られたカルアは「ブルルッ」と言って傍を離れた。
「あの…大丈夫?」
心配げに尋ねてきたのはセリアだ。
「う…うん…。」
差し出された手を借りて起き上がっているとリムセアの窘める声が聞こえた。
「カルア。セリアを守るのは良いけれど、過保護過ぎだといつも言っているでしょう?ぶつかったぐらいでは怪我なんてしません。」
そう言われているカルアはそっぽを向いている。聞く気がないようだ。
「あのね、カルアが『怪我はしなくても、抱きつかれでもしたらぶっ飛ばしたくなるから。』って。」
さらりとヒドイ事を言っている気がしないでもないが、どうやらちゃんと聞いていたようだ。
というか―
「……ぇ?カルアが言ってるのか?」
コクリと頷きながら「うん。」とセリアが答えた。
「セリアは"話す能力"を受け継いで生まれたんです。」

遥か昔、特別な力を持った者達がいた。その力をより強固な物にし、子孫へと受け継がせようと特別な力を持つ者同士の結婚が定められた。
だが、時が経つにつれその力を持つ者が減っていき、近親婚を繰り返すようになった。
無理な結婚により身体に異常が出る者が増え、やがてその能力は滅びを迎える事となった――。
今では"見る能力"や"呼ぶ能力"などはそれぞれ新しい形でその能力を習得できるようになったが、"話す能力"は受け継がれていない。
何故なら"話す能力"を持つ者自体が極めて少なく、その存在は幻と言われていた程であったからである。
そんな話を聞いたユーイは、ただただ感心するばかりであった。
「へぇ…。でも、どうして今になってそんな能力が?」
話からすると、能力を持った者は途絶えたはずだ。例えその能力を持った者の血が受け継がれていても、長い時を経た今では血がかなり薄まっているはずである。
そう思ったのだが、リムセアが答えを出してくれた。
「恐らく、私に流れるエルフの血にその能力が受け継がれていたのかと思います。エルフは長命ですから。」
なるほど。確かにエルフの血であればまだ薄まっていないのかもしれない。
エルフってすごいなぁ…とセリアとリムセアを眺めた。
親子なだけあってよく似ている。姉妹と言っても誰も疑わないだろう。
姉妹…そう思って、一つ気になった。
「もしかして、セリアさんも実際はかなり年を…?」
あり得るかもしれない。20代前半とも見て取れるリムセアさんがこうなのだから…。
というか、"セリアさんも"と言ったのは不味かったかな…
内心で冷や汗を掻きながらチラリとリムセアの方を見たが、気にしてないようだ。
「私は見た目通りだと思うけど…。今年で17歳よ。」
今年で17歳という事は…
「俺と同じ歳だ。ユーには歳の近い人がほとんどいなかったから新鮮だなぁ。」
子供の頃から同年代の遊び相手がほとんどいなかった。いや――いなくなったのだ。13年前のモンスターによるユー襲撃によって――。
多くの人が死んだ。緑が生い茂るユーの街並みは黒く焼け焦げ、凄惨な現場は今も目に焼き付いている。
「そうね…ユーには歳の近い人がほとんどいないわね…」
家はユーから少し離れているが、セリアさんはユーにはよく来ていたのだろうか。話からするとユーに暮らす人々の事を知っているようだ。
聞いてみようと口を開きかけた時、リムセアが呼んだ。
「ユーイさん」
振り向くとリムセアが変わらぬ微笑を浮かべていた。
「立ち話もなんですし、もう外も暗くなって来ているので今日は泊って行きませんか?」
窓を見れば、だいぶ薄暗くなってきている。空は分厚い雲に覆われ、風も吹いている。今夜は嵐が来そうだ。
「えっ、いいんですか?そう言ってもらえるとすごく助かります。死にかけたばかりだし、嵐の中で野宿はちょっと…。」
喜ぶユーイにセリアが笑いかける。
「えぇ、是非泊っていって」

泊る事となったユーイは夕飯までもご馳走になった。
2人が作ってくれた料理はどれもおいしく、自然と頬が緩む。
夕飯を食べながら、たくさんの事を話した。
父母がいない為、ヒーラーに養ってもらっていた事。昔は冒険者だったという鍛冶屋の親父に剣を教わり、17歳になったのをきっかけに旅に出た事。
セリア達の話も聞かせてもらった。
昔は首都ブリテインから少し離れている集落で暮らしていた事。自分と同じくユー襲撃によって父が行方不明になっている事。カルアはその父のペットだという事も聞いた。
話している途中、ふと考え込んだセリアが思いもしなかった事を切り出した。
「ねぇ、私も一緒に旅したらダメかな?」
聞き間違えたのかと、すぐに反応出来なかった。
一緒に旅?セリアさんと??
「セリア?何を言っているの。旅に出て何をしようというの?」
リムセアの問いにセリアはすぐに答えた。
「お父さんの行方を捜しに行きたいの。ねぇ、1人じゃないのだからいいでしょう?」
リムセアが一瞬言葉に詰まったように見えた。
「…ダメよ。お父さんの事は諦めなさいと言ったでしょう?それに、ユーイさんに迷惑がかかるわ」
それまで2人のやりとりを聞いていたが、自分の名前が出て言葉に困った。
「えーと…俺としてはすごく助かるけど…。でも、俺弱いし危ない目に遭うかもしれないよ?」
「大丈夫よ。カルアもついてくるって言ってるし、問題ないわ」
セリアは自信たっぷりだ。その顔を見ていると、こちらの不安さえも吹き飛んでしまう。
セリアさんだけでも充分心強いのに、カルアもいてくれるならどこへでも行けそうだなぁ…
そう思ったユーイは快く申し出を了承した。
「それなら俺としても助かるから、こっちからお願いしたいぐらいだよ」
それを聞いたセリアの顔がパッと華やいだ。
「ほんと?ねぇ、お母さん。ユーイさんもこう言ってるんだからいいでしょう?」
「はぁ…しょうがないわね。ごめんなさいね、父親探しを協力させる事になってしまって…」
渋々といった感じだが、リムセアも了承した。
「いえ、どうせ当ても無い旅ですし。セリアさんがいてくれれば心強いです。」
リムセアは一瞬困った顔をしたが、「でも」と続けた。
「今日はゆっくりして行って下さいね。セリアは旅支度をして、今夜は早めに寝なさい。」
「はーい」
いかにも嬉しそうなセリアは、旅支度をするべく自室へと向かって行った。その後をカルアが追う。
「じゃあ、私は携帯出来る食料を用意してきますから、ユーイさんは眠くなったら先程の部屋で休んで下さいね。」
そう言ってリムセアはキッチンの方へ行き、携帯食料を準備し始めた。
1人リビングに取り残されたユーイは特にする事もなく、来た時に借りた部屋へ行きベッドの上に横になった。
うーん、ふかふかなベッドだなぁ。こんなベッドで寝たの何年ぶりだろう…
ヒーラーにお世話になっていた頃は、こんなベッドで寝ていた。だが、成長して自立した頃には質素な暮らしを始めた為、こんなベッドとは縁が無くなった。旅に出た今は尚更だ。
明日からはセリアさんも一緒なら、野宿はまずいよなぁ…
宿に泊る為には強くなっていっぱい稼がないといけないな。野宿なんてさせたらリムセアさんにも申し訳ない。
ふと、窓の外を見ると雨が降り出していた。
明日は晴れるといいな。
そう思い、瞼を閉じた。
ふかふかなベッドはすぐに眠りを誘った。

深夜――
人々が寝静まり、辺りは嵐の到来により虫の声さえ聞こえないユーの街を囲む森の奥深く。極一部の人しか知られていない神殿の前に、1人の銀髪の女性が降り立った。
その女性は、神殿の扉に手をかけると何か呟いた。
すると、扉は音もなくゆっくりと開いた。
そのまま歩みを進める女性の足取りに迷いはない。
外の嵐の音さえ届かぬ神殿の中は、異様な程の静寂に包まれている。聞こえるのはその女性の靴音だけだ。
最奥へ着くと、その女性は歩みを止めた。
目的の人物を見つけたからである。
「来たか。」
そう声をかけた人物はダークグリーンの長い髪を背に垂らし、女性に声をかけた。
「はい。…あの者が娘と接触致しました。すでに運命は動き出し、避けては通れません。」
報告を受けた男性は「そうか…」と呟いた。
「そなたはどうするつもりだ?」
女性は目を伏せ、つい今しがたまで悩んでいた事を答えた。
「時間が許す限り2人を見守るつもりでございます。ですが、もしその時が来たら…この手で――。」

辛い決断をするこの者が哀れであった。
人として愛する者との幸せを願い送り出したというのに、得たものはすべて奪われようとしている。
予期していなかった事とはいえ、この現状に追いやってしまった原因は私にある。
「すまないな…。私も何かしら手を打とう。」
「ありがとうございます。ですが、娘が傍にいればきっと上手く収まると信じております。だって…私とあの人の娘ですもの。」
信じて疑わぬ強い意志。その想いはきっと力となるだろう。
この者が唯一愛した男との間に出来た運命の子を、私も今しがた信じる事にしよう。
すべてが良き方向に向かう事を願って――。
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【2009/11/19 02:38】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0)
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